なんか気付いたら5回も大洗について書いている。
早速
前回の続きだが、日本戦車道連盟模擬試験を終了し、大洗駅で一息ついていた俺は、
「これで帰るのも難だな……」
ふと、そう思った。
実際、この時点で選択肢は無数に存在していた。
たとえば、東にある大鳥居を見に行くというのはどうだ。その先には
大洗磯前神社もある。主祭神は大己貴命。江戸の時代、かの徳川光圀によって再興されたという歴史を持つ、ガチで由緒ある神社である。調べてみたら別表神社だったのでマジで格が違う。
あるいはフェリーターミナルなどの港湾施設を見物に行くのもいいだろう。遠目に見ただけで、間近で見てはいない。
さらには、商店街をもう一度ゆっくり見物するというのも手だ。
もうおわかりかと思うが、上でこう前振りをしているので、つまりどれも実施していない。
目標を定めたMildは、ふらりと駅のベンチから立ち上がり、売店で缶コーヒーを一本買うと……自分で書いていて思ったがコーヒーを飲み過ぎである。確か、このあとさらに2本は飲んでいる。
温かい缶コーヒーを片手に駅から出たMildは、そのまま右に向かって歩き、すぐ立ち止まり、写真を撮った。
大洗駅を外から見て、左側の端の方の写真である。
一見なんのことはない風景の写真だが、ガルパン視聴者としては抑えておいて悪くない場所だ。
ここは、最終話のあるシーンで登場する。
どういうことかというと、駅のベンチに座っていた俺は、模擬試験の最中に出会ったガルパンファンの1人が、こう言っていたのを思い出したのだ。
「終わったら、最終話のあのシーンのルートをトレースしようと思うんですよ」
このとき、俺はものすごく「なるほど!」と思った。
感心具合としてはこのレベルに達した。
なので俺もやってみようと思ったのである。
とか言いながら、
歩きながら撮った写真はこの2点だけである。
最終話ED時に通り過ぎるコインランドリーと、左折する交差点。これだけ。
我ながら瑣末だが、なぜこうなったかというと、このあとのシーンに該当する風景を発見できなかったのである。少なくとも先の記事に登場した、ENEOS大洗本店SSさんが描かれているのは確認できたが、その前後のシーンで、周囲の風景は現実のもとのと結構違っているように見えるのである。
首を捻りながら歩いていたMildは、あるお店の前を通過する。そのとき、そのお店のなかにいらした女性の方から、思いがけずお声がけをいただいた。
そのお店とは、
その3で一度立ち寄らせていただいた、和泉屋米穀店さんだった。ちょっと立ち寄っただけの自分のことを覚えていてくださったのである。
模擬試験が無事に終了したこと、まだ時間はあるので散策していることなどを告げると、女性の方から、お店のなかで休んでいってはどうか、とのお言葉をいただく。
Mildはふたつ返事で応じ、お店のなかへ。すると、男性の方が2人、事務机とテーブルチェアにそれぞれ腰掛けている。Mildは慌てた。事務机に座っておられる方はご主人だろう。だが、もう1人はどう見ても友人か知り合いの方のように見える。先客がいるのに邪魔していいのだろうかと、そう思ったのである。なにしろ、その男性の方はテーブルに何かを広げて作業をしている。
焦るMildだったが、皆さん異口同音に、とくに気にしなくていいと言う。
そう言われてはむげには出来ない。遠慮がちに空いているチェアに腰掛けたMildだったが……。
五分後、なんか自然に会話に混じっていた。
俺のなかの人気投票でエルヴィンが2位であることを告げたら、エルヴィンとほぼ同じ格好をした(もちろん下はスカートではない)気合入りまくりの男性の方がいらしたお話であるとか、そこからなぜかコスプレの話に広がって、
このような写真を見せていただいたりもした。
というか、この写真は、掲載許可はいただいているが、ぶっちゃけ写っている西住みほの中の人は、聞く限り、このお店を訪れた1ファンの方なのである。
実は掲載するものか結構悩んだのだが、そして今も悩んでいるが、このクオリティに敬意を表する意味でも掲載させていただこうと思う。
頭部はもちろん、脚部もすべてきぐるみらしいのだ。材質はどうなのかとか、設計はどうやったのかとか凄い気になる。又撮りなのでわかりづらいかもしれないが、かなり丁寧な作りである。
しかし、これ通気性はどうなのだろう。夏コミとか死ぬんじゃないだろうか。
……というような、およそお米屋さんで通常展開されるであろうものとは別次元のトークで談笑していたら、あっという間に時間が過ぎていく。子猫も可愛かった。
それと、ここでは書けないような面白いお話も伺えた。
しばし憩いのときを楽しんだMildは、ルートを再度探索する。
しかしながら、なかなかベストなポジションが見つからず、その後、なんとなくで三度アウトレットに向かってしまった。なぜそうしたか、と言われると、ほんとうになんとなくだったので説明しがたいのだが、結果的には妥当な選択だった。
不完全燃焼のまま、この日三個めとなるあんこうやきを食していたMildは、なんとなくこの日撮影していた写真と、まだ見ていなかったパンフレットなどをチェックしていた。そこで、あることに気付いたのである。
撮るつもりでいたキャラクターのパネルを、1つ撮り忘れている。
確かこのとき、1530時から1600時のあいだくらいだったろう。
慌ててマップを広げ、目的のキャラクターが配置されたお店をチェックする。アウトレットからは、大洗町役場を超えた少し先にある。
こうしちゃいらんねえ! とアウトレットを後にしたMildは、足早に歩き、
そのお店、お蕎麦・民宿「
あんばいや」さんに辿り着いた。
だが、一目で気付く。お店が営業していない。パネルものぼりも仕舞われている。
検索したら、夕方は1700時から営業とのこと。この時点で、1620時とかそれくらいだったと思う。
この展開は予想外である。30分という時間はかなり微妙だ。どうすれば……。
恐らく、戸をあけてお願いすれば写真を撮らせてもらうことはできるだろう。だが、俺はこの時点で猛烈にお腹が空いていたのである。できれば何か食事もとっておきたいし、なによりこのあたりはお蕎麦のお店が多いようだから、きっと美味しい蕎麦が食べられるに違いない。
しかし、そのためにはあと30分という時間をどうにかしなければならないのだ!
途方にくれかけたMildは、すぐにあるお店の存在を思い出した。
あんばいやさんから歩いて数分の位置に、喫茶店「ブロンズ」さんがあるのを、模擬試験中にみかけていたのだ。ここで休憩がてら温かいものを飲めばいいではないか。
そう思い、お店の軒先に立った途端、目に「ガルパンドリンク」「ガルパンランチ」と書かれたメニューが飛び込んでくる。またしても写真を撮り忘れた。
これのランチの方は戦車を模した形をしていた。カレーとスタミナ焼き定食の2種類があるのだが、いかに腹が空いているとはいえ飯を待つあいだに飯を食うのはどうだろう。でもかなり魅力的だ……。
などと考えながら戸を開いたら、お店にはお客さんがいない。店主の方が出迎えてくれる。女性の方だ。
とりあえず、ガルパンドリンクを注文。といっても、何種類かあるドリンクメニューのなかから1種類を選択するタイプだ。あんずソーダ、ももソーダ、ゆずソーダなどが魅力的だったが、コーヒーなどはホットにもできるというので、ホットコーヒーを注文。我ながら無難で面白味のかけらもないチョイスであるが、ご容赦いただきたい。
注文すると、おまけに缶バッジを一個くれるという。なるほど、だからガルパンドリンク。
ご店主は、コーヒーを淹れながら話を振ってくれる。特に興味深かったお話がある。
お店にはガルパンドリンクやランチのメニュー表があり、さらに、
これらのうちわや鉛筆。ほかにも「包帯を巻かれたテディベア」など、ガルパンに関連するグッズが数多いのだが、これらは100%ファンの方からの贈り物だというのだ。
鉛筆とか完全にプロの仕事である。売ってくれと思ったが口には出さなかった。
さらに、ランチメニューの料理そのものも、ファンの方の意見を参考に1から作ったそうなのだ。どこまでいくんだ、と思ったが、ランチメニューのカレーの福神漬の配置について「これは戦車が直撃を受けて吹き出ている炎のイメージなので車体後方に置いてください。って意見が……」とご店主から聞いたとき、脱帽した。リアルに。
そういうわけでスタミナ焼きの方を食べたのだが、すみません、写真ないです。美味しかったです。
スタミナ焼きだが、その名も「うさぎさんチームセット」といい、ちゃんと戦車型のご飯にピンクの色味が入っている。でんぶが混ぜてあるのだ。そんな凝った作りなのに味はしっかりしているのでより驚きだ。ちょっとピリ辛のスタミナ焼きとの愛称は抜群である。
なお、カレーの方は「生徒会チームセット」といい、サフランライスで金ピカ38(t)をイメージしている。どうしてそこまで気合を入れてしまうのか。ファンも、ご店主も。
圧倒されつつスタミナ焼きを平らげ、コーヒーをいただいていたら、地元の常連さんらしいお客さんたちが何人かやってくる。普通のおばちゃんとか仕事帰りのおっちゃんとかなのだが、この方々も気さくに話しかけていただけたのはありがたかった。
しばらくして、お店を出たMildは、やっちまった感を醸し出しつつも、「あんばいや」さんへ向かう。胃袋のサイズは人並みだと自認している。このあと何か食べて平気なのだろうか……。
こっちはちゃんと写真に撮らせていただいた。
あんばいやさんのきつねそばである。Mildはそばやうどんといえばきつねの男だ。
茨木というと、蕎麦が美味しい地域というイメージがあるので、密かに期待していたのだが、期待通りの美味しさだった。
つゆは関東風の醤油味だが、蕎麦の風味はしっかりしており、なにより油揚げが美味しい。きつねというとふっくらとした油揚げを甘辛く煮たものが主流だが、こちらのお店はそうではない。油揚げそのものの味が絶品である。油揚げを食べてこの感想を言ったことはないが、濃厚だ。元の豆腐も抜群に美味しいに違いない。
あっさり完食できてしまった。
食後、パネルを撮影させていただいた。サンダースのナオミだ。
このキャラクターが好きだと告げると、お店の方は意外そうな顔をされていた。「この子が好きだというお客さんは珍しい」のだそうだ。意外だ。
なお、こちらのお店でも……、
ファンの方から送られたというサンダースの校章マグネットシートと、街中かくれんぼの全キャラクターで彩られたポストカードなどを見せていただけた。ガルパンファン……一体何者なんだ……?
満腹になり、あんばいやさんをあとにする。1730時ごろのことだ。もう外は薄暗くなり始めている。雲のせいもあるだろう。
商店街を見物しながらゆっくり歩いていたMildは、昼間に秋山優花里を激写した「年宝菓子店」さんの前を通りかかる。秋山殿をチラ見しながら通りすぎようとしたとき、お店のなかに何か置かれているのを発見する。
思わず立ち止まり、お店に入る。奥から年配の女性が出てくる。
撮影の許可を願うと、快諾していただいた。
上の写真だが、砲塔と車体は別々の戦車のものである。それをニコイチしたオリジナル。砲塔は38(t)で、車体は確かルノーFTと仰っていたように思う。
下の戦車の方は、今現在UCCの缶コーヒーについてくる「最強の陸自コレクション」と、その昔展開されていた「ワールドタンクミュージアム」の車両たちだ。
この時点で、Mildは違和感を感じていたのだが……。
いつの間にか奥に引っ込んでいた年配の女性の方が、「今、作った人が来ますから」と仰られた。
Mildは身構えた。違和感がどんどんはっきりとした形になってくる。
ご主人が登場。上の画像のモデルについて訪ねると「これはモデルグラフィックスに~」
この人ガチモデラーや
そう確信に変わった瞬間である。ワールドタンクミュージアムを知っているということは、もう何年も前からミリタリーモデルを作っている人物に違いないと感じたわけだが、さらにモデルグラフィックスに投稿されているわけだから、ご主人は間違いなく本格派のミリタリーモデラーであろう。
それにしても、2枚目の左上に写っているティーガーとか作りこみが半端ない。ワールドタンクミュージアムは1/144という小サイズなのだが、車長用ハッチが稼働するように手が加わったりしているのだ。
もっというと、2枚目の画像中央に大洗女子の型が置いてあるのだが、これもご主人がご自身で作られたものなのだそうだ。レジン製らしい。この型を使って大洗マークのべっこう飴を製造・販売しているという。
その後も、Mildのような最近はガンプラ素組みしかしないにわかモデラーがこんな会話してていいのだろうか。というような各プラモメーカーの戦車キットについてのトークが続いた。熱いご主人であった。
帰宅後調べてみると、モデルグラフィックスにご主人の作例が何度も掲載されたような記述を発見し、恐縮することしきりである。
思いもよらぬ展開の連続だったが、胃袋も心も満たされたMildは、結局みつだんごのことを失念したまま大洗駅に到着。
このとき、1815時ごろだったと記憶している。
インフォメーションはもう閉まっていたので、こうやって駅の内外を撮影しながら列車を待った。2枚目の売店だが、画像左側の雑誌コーナー。その一番上のあたりに注目していただきたい。
その後、1833時発の列車で大洗をあとにする。今日の活動時間が半日を超えていることに気づき、苦笑しながら電車に揺られていた。
そして、電車が水戸の一歩手前、東水戸に停車したときのことである。
ホームの反対側に列車が入ってくる。何気なくそちらを向いて、目を剥いた。
ラッピング電車。
ここまでやっているとは。だが、このタイミングで遭遇するとはツいてるじゃないか。
そう思いながらシャッターを押す。直後、自分の乗り込んでいる列車が発車。
あっという間に列車が遠ざかる。大洗も。
旅に特有の寂しさを感じながら、水戸駅に到着。水戸は言うまでもなく都会で、人が多く、大型商店も多い。急激な変化に息苦しさすら覚える。
水戸駅北口、バスロータリーの9番乗り場に向かい、そこでバスを待つ。
帰りは水戸-東京間の高速バスを使うつもりだった。
時間的に、10分も待たずにバスが来るだろう。
水戸駅前の丸井などを眺める。この街から30分弱で大洗というのは、俺の地元から30分で横浜っていうのよりはインパクトがあるな……などというどうでもいいことを考えていると、バスが来る。あたりまえだが、ガラガラ。運転手さんに運賃を支払、席に着く。1910時ごろに水戸を出発。
次に気付いとき、バスはもう東京都に入っていた。眠ってしまっていた。
2100時ごろ。バスは首都高向島ICを降りる。程なく浅草に止まるというので、調度良いと思い、そこで降りた。
ここからなら、銀座線一本で渋谷に出られる。上野や東京から渋谷に向かうよりは気楽だろう……。
そう考えながら銀座線浅草駅の入り口に向かって歩いていたら、目の前に東京スカイツリーが現れる。
スカイツリーは、その半ばから雲に隠れて見えなくなってしまっていた。
5回に分けて記事にした大洗の旅だったが、なによりも驚かされたのは、大洗の人々と、ファンとのあいだにあった交流である。その繋がりから形作られたものを、訪れた俺や、他の誰かが触れて、どんどん広がっていくのだろうか。だとすると、どこまで広がっていくのだろうか。
そういえば、8月には、
こんなイベントが企画されているらしい。そのとき、また訪れてみるのもいいかもしれない。 大洗の旅は、素直にそう思えるような素晴らしいものとなった。